新規開業の増加や患者さんのニーズの多様化により、接骨院の経営環境は年々厳しさを増しています。一方で、Webマーケティングの進化やSNSの登場により、効果的な集客手法の選択肢は広がりつつあります。
本記事では、私たちディプシーが数多くの接骨院のWebマーケティングを支援してきた経験をもとに、デジタル時代における接骨院の集患戦略を、具体的な事例とともに解説します。
従来型の施策とデジタルマーケティングを効果的に組み合わせることで、着実な成果を上げている接骨院の特徴や実践的なノウハウを、分かりやすく紹介していきます。
- 【この記事を読んでほしい方】
- ・新規開業を検討している接骨院の先生方
- ・従来の集患法に課題を感じている接骨院の院長先生
- ・Webマーケティングを活用したいが、何から始めればよいか迷っている方
- ・効果的な集患方法を体系的に学びたい接骨院経営者の方々
集客に失敗している接骨院の特徴

接骨院経営を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。新規開業の接骨院が増加し続ける中、マーケティング戦略を構築して効果的に集客することが存続の鍵を握っていると言えます。
まず、集客に失敗している接骨院の課題を具体的に考えていきましょう。
接骨院が陥りがちな集客の“罠”
接骨院の集客を行う際に、漠然と「とにかく患者さんを増やしたい」という目標を設定していませんか? そこには大きな落とし穴があります。
やみくもに広告にお金をかけていませんか?
Web広告やチラシといった経費のかかる販促施策ばかりを重視しても、そもそもの経営戦略が不明確なままだとあまり効果はあらわれないでしょう。
月間50万円以上の広告費を投じているにもかかわらず、新規の患者さんをなかなか獲得できず、苦戦している接骨院も実際にあります。また、広告費用の費用対効果を正確に測定できていない接骨院も多いのではないでしょうか。
価格競争に陥っていませんか?
地域の接骨院と価格競争になってしまい、自費診療の料金を必要以上に下げなければならない状態に陥っていませんか? 短期的には患者さんを増やすことができるかもしれませんが、長期的には、人件費や設備への投資ができなくなり、結果として施術の質が低下してしまいかねません。
価格競争は一時的な患者さんの獲得には効果があるものの、経営を持続させるという観点に立てば、大きなリスクとなるのです。
技術にこだわりすぎていませんか?
高い施術技術をもつことは、たしかに接骨院としては重要なことです。しかし、患者さんが接骨院を選ぶ理由は、必ずしも技術だけではありません。
実際の患者さんの声を聞いてみると、技術力以外にも、予約の取りやすさ、スタッフの対応、通院のしやすさなど、様々なポイントがあるはずです。
技術にこだわる姿勢は大切ですが、それ以外の要素をないがしろにしては、患者さんの真の満足は得られません。
選ばれる接骨院になるためのニーズを把握していない
患者さんのニーズを正確に把握できていない接骨院も多いようです。つまり、患者さんの期待と実際のサービスの間にギャップがあるのです。
情報提供における課題
せっかく専門性の高い施術を提供していても、それを患者さんにわかりやすく伝えることができなければ意味がありません。治療計画や予後の説明が不十分で、患者さんが不安をもってしまうことはありませんか? 料金体系が複雑で分かりにくかったり、施術内容の詳細が伝わっていなかったりというケースも少なくありません。
利便性に関する問題
患者さんが不満を感じることが多いのは、待ち時間が長すぎたり、予約システムが使いづらかったりすることです。仕事の合間に接骨院を訪れる患者さんにとっては、診療時間の柔軟な対応を望む声が多く聞かれます。郊外の接骨院なら、駐車場の利用しやすさといったことも関係するでしょう。高齢の患者さんや遠方から来院される方にとって重要な選択基準となるからです。
コミュニケーションの不足
施術者の説明が専門的すぎて理解しづらい、質問や不安に十分な回答が得られないといった声も多く聞かれます。定期的な経過報告が不足しているため、治療の進捗が見えにくいという指摘も少なくありません。さらに、SNSなどでの情報発信が不十分なため、接骨院の特徴や治療方針が患者様に十分に伝わっていないケースも見受けられます。
他の接骨院との差別化ができていない
「丁寧な施術を心がけています」
「痛みの改善に自信があります」
「経験豊富なスタッフが対応します」
どの接骨院のホームページやチラシにも、似たような表現や特徴が並んでいます。これらは確かに大切な要素ですが、差別化要因としては弱いでしょう。では一体どのように差別化するのが効果的なのでしょうか。

差別化に成功している接骨院なら、特定の症状や治療法に特化するのが効果的です。
例えばスポーツ障害の治療に特化し、地域のスポーツチームと連携している接骨院や、妊婦の方向けの施術に特化し、産婦人科医院との連携を強化している接骨院などはその好例と言えるでしょう。
独自の施術テクニックを開発し、それを明確な強みとして打ち出している接骨院もあります。
システムで差別化を図る
予約や施術管理のシステムを使いやすいものに一新することで、患者さんの利便性を大きく向上させている接骨院もあります。オンライン予約システムを導入したり、LINEを活用して双方向コミュニケーションを行ったり、待ち時間ゼロを実現する予約管理を実現したり、といったテクノロジーを活用した差別化は見逃せません。
ターゲットを特化する
「すべての患者さんに対応します」という姿勢は、一見、間口が広く、親切なように見えますが、じつは差別化を困難にしています。
女性専用の施術時間帯を設けたり、スポーツ選手向けの特別プログラムを提供したり、高齢者に特化したバリアフリー設計を採用したり、というように特定のターゲットに焦点を当てた戦略を検討してみましょう。
ディプシーからのアドバイス
まずは自院の強みを見つめ直し、それを活かせる患者層を絞り込みましょう。たとえば来院している患者さんにアンケートを実施し、なぜ自院を選んでくれたのかを把握してみてはいかがでしょうか。

接骨院の集客において明確にすべき戦略とは

具体的な集客施策にとりかかる前に、接骨院経営として明確にしておくべき重要な要素があります。多くの接骨院が見落としがちな戦略立案のポイントについて解説していきます。
接骨院としての理想の患者さん像を明確にする
前項でも少し触れましたが、多くの接骨院が「どなたでも歓迎」という姿勢を掲げがちです。じつはこれが効果的な集客の妨げとなっていることがあります。
年齢層は? どんな生活スタイルなのか?
まずは、来院してほしい患者さんの年齢層、その世代特有の生活習慣、行動パターンといったことを把握しましょう。
たとえば「30~40代の働く女性」をターゲットとするなら、通勤途中に立ち寄れる立地が重要になったり、夜間診療を望む人が多いだろうと予想できます。また、そのような層は、日常的にスマートフォンで情報を収集したり予約を行うことが当たり前になっているのではないでしょうか。
どんな症状に悩み、どんな治療を望んでいるか?
どのような症状や悩みを持つ患者さんに満足度の高い治療を提供するか、ということを明確にしましょう。
たとえばスポーツ障害の治療に強みを持つ接骨院として、アスリートや運動愛好家に特化したメニューを用意すれば、より効果的な集客ができるでしょう。
短期な集客施策と中長期な集客施策を使い分ける
集客施策には即応性のあるもの、時間を要するものがあり、それらをバランスよく使い分けて実施する必要があります。
すぐに効果が出やすい施策
開院直後や季節の変わり目などは、なるべく速やかに患者さんを確保したいタイミングです。この場合、Web広告やチラシ配布といた即効性のある施策が有効です。もちろん、それは一時的な対応として位置づけ、並行して中長期的な施策を検討してください。
のちのちの布石となる施策
口コミでの評判形成やSEO対策などは、効果が表れるまでに一定の時間がかかりますので、早い段階から着手するようにしましょう。
たとえば治療実績や患者さんの声を定期的にWebサイトに掲載すると、半年から1年後の集客に大きく影響するはずです。
季節変動を見すえた計画
接骨院の来院数には季節によって変動します。スポーツ障害の増える春・秋、冷え性の悩みが増える冬期など、症状の特徴を踏まえた施策を事前に計画しておくことで、年間を通じて安定した集客が可能になります。

接骨院としての“強み”を見つける
自院の強みを適切に把握し、効果的にアピールすることが集客の要となります。
施術技術以外の価値を見つける
高い施術技術も重要ですが、それ以外の価値も見落とさないようにしましょう。
たとえば丁寧な説明を心がけるスタッフの対応力、清潔で落ち着ける院内の雰囲気などといったことも重要な強みになり得ます。
地域特性を活かす
立地条件や地域の特性を活かした強みづくりについても考えてみましょう。
住宅街の中にある接骨院なら主婦層向けに平日午前中の予約を取りやすくしたり、駅前の接骨院なら通勤帰りの会社員向けに夜間診療を充実させたり、といったように、場所柄を活かした特徴づけが有効です。
戦略的に設備投資する
新しい治療機器の導入は、それ自体が強みとなる可能性があります。ただし投資額に見合う効果が得られるか、維持費用は適切か、実際の需要はあるのかなど、慎重に検討しましょう。
スタッフの専門性強化
院長やスタッフの得意分野を伸ばし、専門性を高めることで、特定の症状に強い接骨院としての評価を得ることができるでしょう。
ディプシーからのアドバイス
なりたい接骨院像、つまり「誰に」「何を」提供する接骨院なのかを具体的にイメージし、それに合わせて設備投資やスタッフ教育、予約システムなどを最適化していきましょう。地域特性や自院の立地を活かした独自の強みづくりを意識することで、より効果的な集客につながっていきます。

接骨院のためのWeb集客実践ガイド

今の時代、ほとんどの患者さんは、インターネットで接骨院を探していると言ってもいいでしょう。接骨院に特化したWeb集客の具体的な手法を実践的な視点から解説します。
接骨院のホームページ制作で押さえるべきポイント
Web集客において中核となるのはやはり自院のホームページです。 患者さんが自院を選んでくれるようなホームページを実現するためには、次のような要素が必要不可欠です。
デザインと使いやすさ
ホームページを訪れた患者さんが、ストレスなく必要な情報にたどり着けることを重視しましょう。もちろん、パソコンよりもスマートフォンでより魅力的に表示されることを最優先に設計してください。8割以上の患者さんはスマートフォンから接骨院を探しているからです。
予約ボタンは画面上で目立つ位置に配置し、写真やイラストを効果的に使うことで親しみやすさを演出します。文字の大きさや行間にも配慮し、高齢の方でも読みやすい設計を心がけましょう。色使いは3色程度に抑え、清潔感のある印象を与えることが大切です。
掲載すべき基本情報
患者さんが知りたい情報を分かりやすく提供してください。
中でも診療時間と休診日は、トップページで一目で分かるように表示しましょう。
アクセス方法についても、最寄り駅からの経路説明や駐車場情報を詳しく記載します。
施術内容と料金体系は、保険診療と自費診療の違いを明確に説明し、患者さんの不安を解消してあげてください。
院長やスタッフの紹介ページでは、経歴や専門分野だけでなく、人となりが伝わるような内容を心がけるのがおすすめです。
接骨院のGoogleビジネスプロフィール活用術
接骨院を探している患者さんは、スマートフォンの地図アプリを利用することが多いでしょう。中でもGoogleマップを利用するケースが多いことが予想されるため、Googleビジネスプロフィールを適切に運用することが集客に直結します。
プロフィールの最適化
基本情報を正確に記載することはもちろんですが、施術写真や院内写真などを定期的にアップロードすれば、検索順位を向上させることができるでしょう。
説明文には、得意な症状や施術内容のキーワードを自然な形で含めましょう。 駐車場やバリアフリーなどの設備情報も、来院を検討する患者さんにとって重要な判断材料となります。
口コミ対策の重要性
Google上の口コミは、新規の患者さんを獲得するのに大きく影響しますので、来院された患者さんに自然な形で口コミの投稿をお願いしましょう。
口コミが投稿されたら、良いものも悪いものもすべてに丁寧に返信してください。誠実な対応を心がける接骨院という印象をもってもらうためです。
返信内容には個人情報やプライバシーに関する言及は避け、一般的な内容に留めてください。
接骨院のSNSマーケティング戦略

SNSを通じた情報発信は、接骨院の認知度向上と信頼構築に効果的です。各SNSの特性を理解し、それぞれの長所を活かした発信をしてください。
SNSごとの特性
まず、Instagramでは、視覚的なコンテンツが重要です。
院内の雰囲気や設備を写真で紹介することで来院前の不安を和らげたり、スタッフの日常的な活動を紹介することで親近感を醸成したりできます。
健康管理のためのストレッチ動画なども、フォロワーにとっては価値ある情報になるでしょう。
ビフォーアフターの事例共有も効果的ですが、個人情報には十分配慮する必要があります。
Instagramを活用した集客戦略については、本記事後半で詳しく解説します。
LINE公式アカウントは、患者さんとの直接的なコミュニケーションツールとして活用できます。予約受付や確認、治療に関する情報配信、臨時休診などのお知らせまで、幅広い用途に対応できます。特に若い世代や主婦層とのコミュニケーションに効果的です。
Facebookは、より詳しい情報発信に適しています。地域イベントへの参加報告や健康セミナーの開催告知、専門的な健康情報の発信など、じっくりと読んでもらえる内容の発信が向いています。スタッフの研修参加や資格取得など、接骨院としての専門性をアピールする情報発信にも適しています。
接骨院のWeb広告運用テクニック
Web広告は即効性のある集客手法ですが、効果的に運用するには専門的な知識が必要です。予算を最適に配分し、最大限の効果を得られるよう、戦略的な運用が求められます。
Web広告のメリットは、投資対効果を明確に測定できるということです。アクセス数、問い合わせ数、実際の来院数など、数値に基づいて継続的に改善していくことで、より効率的な集客ができるようになります。
リスティング広告の活用
Googleの検索連動型広告では、地域と症状に特化したキーワード選定が重要です。
たとえば「〇〇駅 腰痛 接骨院」といった具体的なキーワードを設定すれば、来院につながりやすい患者さんにアプローチできます。
曜日や時間帯による入札額の調整も効果的です。通勤・通学時間帯や、主婦層が活動する時間帯など、ターゲットとなる層の行動パターンに合わせた配信設定を行いましょう。
ディスプレイ広告の戦略
バナー広告などのディスプレイ広告では、年齢や性別でターゲティングを絞り込めます。
スポーツ障害の治療に特化している接骨院なら、スポーツ関連サイトで広告を配信すると効果的でしょう。
また、季節性のある症状に合わせて出稿するのもおすすめです。冬場の冷え性や、スポーツが盛んな春秋の怪我の増加など、季節要因を考慮した広告展開が効果的でしょう。
ディプシーからのアドバイス
患者さんの目線に立ち、スマートフォン中心の時代に合わせ、ホームページは見やすさと使いやすさを重視し、Googleビジネスプロフィールの最適化で地図検索からの集客を強化しましょう。定期的な効果測定と改善も忘れずに。

地域に根付く接骨院のためのオフライン集客戦略

前項で、今はインターネットで接骨院を探す人がほとんどと書きましたが、とはいえ、接骨院は地域に密着したビジネスですから、従来のオフラインの集客施策も重要です。とりわけ、ご高齢の患者さんへのアプローチにはオフラインでの取り組みが不可欠でしょう。 オフライン集客は、即効性こそWeb施策に劣るものの、長期的な信頼関係構築には欠かせません。
地域密着型マーケティング実践法
地域に愛される接骨院となるためには、その地域ならではの特性を理解して地域との関係を構築することが重要です。
地域コミュニティとの関係づくり
自治会や町内会と関係を構築することは、地域での認知度向上に大きな効果があります。
たとえば地域の健康講座や介護予防教室に講師として参加すれば、専門家としての信頼を獲得することができるでしょう。
地域の老人会や子育てサークルとの連携して、それぞれの年齢層に特化した健康相談会を開催することなども考えられます。
地域の医療機関とのネットワーク構築
整形外科や内科など、地域の医療機関との良好な関係構築も重要です。相互紹介を通じて、患者さんにとって最適な治療を提供できる体制を整えることで、地域医療への貢献度を高めることができます。
紙媒体を活用した広報活動

紙媒体による情報発信は、特定の地域や年齢層へのアプローチに効果的です。
効果的なチラシ制作とポスティング
紙媒体のうちでも特に重要な集客施策は、チラシのポスティングです。
チラシの効果を最大限に引き出すには、まずデザインは清潔感と専門性を意識し、必要以上に派手な色使いは避けます。
掲載内容は、治療内容や料金システムを明確に示し、初めて接骨院を利用する方の不安を解消する情報を盛り込みます。
ポスティングエリアは、自院からの徒歩圏内を重点的に設定し、季節性のある症状が増える時期に合わせて配布しましょう。
地域情報誌への掲載
地域情報誌は、比較的長期間にわたって読者の目に触れる可能性のある媒体です。
掲載する際は、単なる院の紹介だけでなく、季節に応じた健康管理のアドバイスなど、読者にとって有益な情報を提供し、専門家としての信頼性を高めましょう。
地域イベントの企画と実施のコツ
自院主催のイベントは、直接的な集客だけでなく、地域における存在感を高める効果があります。
健康イベントの企画
腰痛予防教室やストレッチ講座など、健康に関する知識を提供するイベントを開催すれば、潜在的な患者さんとの接点を作る良い機会となります。
参加者の年齢層や生活スタイルを考慮し、実生活に活かせる実践的な内容を心がけてイベントを企画しましょう。参加者同士の交流の場を設けることで、コミュニティの形成にも寄与できます。
スポーツイベントへの関わり
地域のマラソン大会やスポーツイベントにおいて、ケアステーションとしての役割を担うのも効果的です。イベント前後のコンディショニングアドバイスや、簡単なケア方法を提供することを通じて、スポーツ愛好家層への認知度を高めることができます。
接骨院の看板・ウェルカムボード活用術

施設の外観そのものも、通行人に対する重要な情報発信ツールとなります。
効果的な看板デザイン
看板は接骨院の顔となるものです。遠くからでも視認性の高いデザインを心がけつつ、周辺環境との調和も考慮しましょう。夜間の視認性も重要で、適度な明るさの照明を設ければ、夜間診療の案内にもつながります。
季節に応じたウェルカムボード
ウェルカムボードは、季節や時期に応じた情報発信に最適です。
たとえば、花粉症の時期には肩こり予防のアドバイス、寒い時期には冷え性改善のための情報など、その時々で患者さんが関心を持ちやすい内容を発信しましょう。
定期的に内容を更新することで、通行人の目を引き続ける効果も期待できます。
ディプシーからのアドバイス
オフライン集客の真髄は、いかに地域と良質な関係をつくれるかということです。高齢者層へのアプローチでは、デジタルとオフラインのバランスの取れた展開を心掛けましょう。

接骨院のリピート率を高めるフォロー施策

接骨院経営において、新規患者さんの獲得と既存患者さんの維持はどちらも重要ですが、新規患者さんの獲得と同じくらい、もしくはそれ以上に重要なのが、既存の患者さんとの関係性強化です。患者さんの継続的な来院を促すための効果的なフォロー施策を解説します。
LINE活用コミュニケーション戦略
LINEは、患者さんとの密接なコミュニケーションのための重要ツールですが、運用には細心の注意が必要です。
効果的なLINEコミュニケーション
LINE公式アカウントでは、メッセージの頻度と内容が重要です。週1回程度の定期的な配信を基本とし、予約の空き状況や季節の健康アドバイスなど、患者さんにとって価値のある情報を提供します。また、急な休診情報や台風などの災害時の診療状況など、緊急性の高い情報発信にも活用できます。
予約管理システムとしても活用
LINEを通じた予約受付や変更は、患者さんの利便性を高めます。特に働いている患者さんは、電話よりLINEでの予約管理を好む傾向にあります。予約確認メッセージの自動配信や、次回予約の提案など、きめ細かなフォローが可能です。
効果的なDM施策の実践
従来型の手法ではありますが、DMは依然として効果的なフォローツールです。特に、高齢の患者さんに対しては、紙媒体でのコミュニケーションが喜ばれます。
DMの内容と送付タイミング
DMは治療の節目に合わせて送付するのが効果的です。
たとえば治療開始から1ヶ月後のフォローアップや、治療終了後3ヶ月での経過確認など、患者さんの状態に応じたメッセージを送ります。また、誕生日や季節の変わり目など、個人に寄り添ったタイミングでの送付も効果的です。
内容は極力パーソナライズする
DMの内容は、誰にでもあてはまるようなものではなく、できる限り個々の患者さんの状況に合わせて作成するのが効果的です。
過去の治療内容や、患者さんから聞いた生活習慣などを踏まえた、パーソナライズされたアドバイスを盛り込むことで、より深い信頼関係を築くことができます。
来院継続を促すインセンティブの設計
継続的な来院を促すためには、適切にインセンティブを設けるのが効果的です。 ただし、過度な割引は避け、適切な価値提供を心がけましょう。
ポイントシステムの構築
来院回数に応じてポイントを付与することには、継続的な来院を促す効果があります。
ただし、保険診療に関するポイント付与は適切に管理し、法令順守を徹底する必要があります。自費診療メニューに限定したポイントを導入するのも一つの方法です。
会員制度の活用
定期的なメンテナンスを必要としている患者さんには、会員制度を提案してみましょう。
月額定額制の予防ケアプログラムなど, 患者さんの健康維持に焦点を当てたプランを用意することで、継続的な関係構築が可能です。
家族割引の導入
家族での来院を促進するファミリープランも効果的です。家族ぐるみの信頼関係を築くことで、長期的な患者さんの確保につながります。特に、子どもの成長に伴うケアニーズの変化に対応することで、世代を超えた関係性を構築できます。
紹介制度の確立
満足度の高い患者さんからの紹介は、最も確実に新患を獲得できる方法です。紹介者と被紹介者双方にメリットのある制度を設計することで、自然な形で口コミを拡大させることができます。
ディプシーからのアドバイス
会員制度や家族割引などのインセンティブを設計する際には、単なる価格訴求ではなく、継続的な健康管理という価値を提供することに重点を置きましょう。

接骨院の集客改善を数字で追う

さまざまな集客施策の効果を客観的に評価し、改善していくためには、指標を適切に設定し、それを分析することが欠かせません。これらの数値指標を改善していくことは、患者さんに提供する自院の価値を高めることになります。
接骨院経営における重要指標の見方
接骨院を健全に経営しながら集客するには、いくつかの指標を総合的に見る必要があるでしょう。
来院数と新規率の把握
最も基本的な指標は、1日あたりの来院患者数です。総数だけでなく、新規患者さんと再来院の患者さんの比率にも注意してください。
たとえば新規患者さんの比率が低かったら、認知度をより向上させる施策が必要ということになります。逆に、再来院率が低い場合は、患者さんの満足度や施術内容の見直しを検討すべきかもしれません。
施術単価と患者さん1人あたりの収益
保険診療と自費診療それぞれの単価設定は、経営の根幹を成す重要な要素です。
地域の相場を意識しながらも、提供する価値に見合った適切な料金を設定しましょう。
患者さん一人あたりの月間や年間の収益を把握することで、長期的な関係を構築できているかどうかを測ることができます。
広告費用対効果の測定
Web広告やチラシなど各種の集客施策にかかったコストと、それによって得られた新規患者さんの数を比較すると、投資効率を測ることができます。
ただし、即効性の高い施策と、長期的な効果を狙う施策がありますので、評価の時間軸を変える必要があります。
成約率を上げるための具体策
問い合わせや予約の段階から実際の来院までの転換率を向上させ、集客効率を高めましょう。
初回問い合わせ時の応対強化
患者さんとの最初の接点は、多くの場合、電話やメールでの初回問い合わせです。
この段階で丁寧な説明を心がけ、適切な情報を提供することが、実際の来院につながります。中でも重要なのは、施術内容や料金体系についての分かりやすい説明です。
予約から来院までのフォロー
初回の予約をしていただいても、キャンセルされてしまったら意味がありません。
キャンセル率は、来院までの期間に適切なフォローを行うことで低減できます。予約日前日のリマインドメールや、アクセス方法の案内など、きめ細かなサポートを行いましょう。
接骨院のリピート率向上施策
新規の患者さんを獲得する以上に重要なのが、既存患者さんの継続的な来院を促すことです。
カウンセリングの充実
施術の過程で、患者さんの生活習慣や仕事環境について丁寧にヒアリングしてください。そこで得られた情報を基に、日常生活での注意点やセルフケアの方法をアドバイスすることで、治療効果の向上と信頼関係の構築につながります。
治療計画の可視化
症状の改善見込みや治療のステップは、患者さんに分かりやすく説明しましょう。患者さんと目標を共有し、定期的に経過を確認しつづけることで、治療への理解を深め、継続意欲を高めるでしょう。
アフターフォローの徹底
施術後のフォローも、リピート率を向上させる重要な要素です。
来院時の状態や施術内容を記録し、次回の施術に活かすことで、継続的な改善を実感していただけます。また、施術後の経過確認の連絡や、健康管理のアドバイスなど、きめ細かなフォローを心がけることで、長期的な信頼関係を築くことができます。

集客に成功した接骨院の事例

実際に集患に成功している接骨院の具体的な事例を紹介し、その成功要因を分析してみましょう。
Web集客で患者数10倍を達成した接骨院の戦略
東京都内のある接骨院では、Web戦略を見直し、月間新規患者数を5名から54名へと大幅に増加させることに成功しました。
成功のポイント
従来の基本情報だけを掲載したホームページから、コンテンツマーケティングを重視した情報発信型のサイトへと転換しました。特に効果的だったのは、「腰痛の原因と対策」「スポーツ障害の予防方法」といった、患者さんの悩みに寄り添った専門的な記事の定期的な更新です。
また、スマートフォンでの閲覧に特化したデザインと、予約のしやすさを重視したユーザーインターフェースを設計したことで、実際の来院につながる転換率も大幅に向上させることができました。さらに、GoogleマイビジネスとSEO対策の連携により、地域検索での上位表示も実現しています。
地域No.1接骨院になるためのマーケティング手法
大阪府のある接骨院では、地域密着型のマーケティング戦略により、開業3年で地域最大規模の患者数を獲得しました。
地域特性の活用
高齢者の多い地域性を活かし、介護予防教室の定期開催や、地域の高齢者サークルとの連携を積極的に推進しました。また、地域の子育て世代向けに、産後の骨盤ケア教室を実施することで、幅広い年齢層からの支持を獲得しています。
医療機関との連携強化
地域の整形外科医院との連携体制を構築し、リハビリ患者の受け入れを強化しました。医療機関からの信頼を得ることで、安定した患者紹介につながっています。
複数の集客チャネルを持つ接骨院の成功事例
福岡県のある接骨院では、オンラインとオフラインの施策を効果的に組み合わせ、安定した集客を実現しています。
マルチチャネル戦略
Instagramでの情報発信、LINE公式アカウントでの予約管理、地域情報誌への定期的な掲載など、複数の集客チャネルを並行して運用しています。各チャネルの特性を活かした情報発信により、幅広い層への認知度向上に成功しています。
コミュニティ形成の重視
月1回の健康セミナーの開催や、患者さん同士が交流できるイベントの実施により、単なる治療の場を超えた、健康増進のためのコミュニティとしての価値を提供しています。
ディプシーからのアドバイス
上記の成功事例から、以下のような施策が有効であることがわかります。
- 1. 明確なターゲット設定と、それに基づいた施策の展開
- 2. 継続的な情報発信による信頼関係の構築
- 3. オンライン・オフライン双方のアプローチ
- 4. 地域特性を活かした独自の価値提供
- 5. スタッフ全員での目標共有と実行力

接骨院の集客の「ここが知りたい」

実際の接骨院経営者からよく寄せられるポイントを紹介します。
保険診療と自費診療の兼ね合いは?
保険診療と自費診療では、アプローチ方法が大きく異なります。それぞれの特性を理解し、適切な戦略を立てることが重要です。
保険診療の特徴と対策
保険診療は患者さんの料金負担が少ないため、新規患者さんを獲得しやすいでしょう。ただし施術内容や広告に関する規制が厳しいため、情報発信の際には注意が必要です。地域からの信頼獲得と口コミによる紹介を重視した、長期的な視点での取り組みが求められます。
自費診療の可能性
自費診療では、より専門的な施術や予防的なケアを提供できます。料金設定の自由度が高い分、提供する価値を明確にする必要があります。施術効果の可視化、丁寧なカウンセリングによる信頼関係の構築が継続的な来院につながるでしょう。
失敗した集客施策も知りたい
実際の失敗事例を知りたいという声もよく聞かれます。より効果的な集客戦略を構築するためには次のような失敗事例を知ることも重要です。
過度な価格競争の罠
近隣の接骨院との価格競争に巻き込まれ、収益性が悪化するケースは珍しくありません。価格での差別化ではなく、施術の質や独自のサービスによる価値提供を重視することが重要です。
広告費用の無駄遣い
効果をろくに測定せずに広告費を投入し続け、十分な成果を得ていないケースもあります。各施策の費用対効果を定期的に検証し、PDCAサイクルを回していくことが必要です。
集客を業者に依頼するには
Web制作やマーケティング支援などを業者に依頼する場合は、慎重に検討する必要があります。
業者選定のポイント
接骨院業界への理解度、過去の実績、提案内容の具体性などを総合的に評価してください。特に医療広告のガイドラインへの理解は必須条件です。
契約時の確認事項
成果指標の設定、報告の頻度、契約期間、解約条件などを明確にしておくことが重要です。また、制作物の著作権や更新権限についても、事前に確認が必要です。
【まとめ】成長し続ける接骨院を実現するには
最後に、これからの接骨院経営に求められる要素について整理します。
デジタルとアナログの融合
オンラインでの情報発信、オフラインでの信頼関係構築の双方をバランスよく組み合わせましょう。特に重要なのは、デジタル技術を活用した患者さんの利便性向上と、対面での丁寧なコミュニケーションの両立です。
地域における存在価値の向上
単なる治療の場を超えて、地域の健康づくりの拠点としての役割を担うことを目指しましょう。予防医学の視点を取り入れた健康管理支援や、地域コミュニティとの連携強化が、今後さらに重要性を増すでしょう。
スタッフ教育の重要性
施術技術の向上はもちろん、接遇やカウンセリング能力の向上も忘れないようにしてください。定期的に研修を行ったり、スタッフ間でしっかり情報を共有することで、院全体のサービス品質を高めていくことが大切です。
接骨院の経営環境は、今後も変化を続けていくことでしょう。しかし、「患者さんの健康に貢献する」という基本的な価値観を持ち続け、時代に応じた適切な対応を行っていくことで、持続的な成長は必ず実現できるはずです。
本記事で解説した様々な施策を、皆様の接骨院の状況に合わせて取り入れ、実践していただければ幸いです。
